音波通信とは何か
まず音波通信を一言で説明すると、音波を利用した通信のことです。さらに、音波とは何かを説明すると、狭い意味では、人間が聞くことができる周波数で空中を伝わる波のこと、広い意味では、気体、液体、固体問わずに物体を伝わる波のことです。さらに超低周波音や超音波も含みます。
SSTの音波通信は、前者の音波、つまり人間が聞くことができる周波数で空中を伝わる波を使用しています。もちろん定義にあわせて音波を使用しているわけではなく、もろもろの理由により、現状は狭い意味の音波を使っているのですが、そのもろもろは後々説明していきます。
ちなみに、広い意味の音波については専門外なのであまり詳しい話はできませんが、水中では魚群探知機のような計測への応用が普及しています。また、水中での音波通信についても研究や実用化が進んでいるようです。固体についても計測への応用は普及していて、超音波腹部エコーのような医療機器は皆さんもご存知だと思います。固体の音波通信は...、糸電話...、すみません。あまりいい例ではないかもしれませんが、糸を伝わる音波で通信しています。
念のため触れておきますが、音波を伝える物体がない空間では、音波通信は使えません。例えば、宇宙空間では、どんなに至近距離であっても音波が伝わらないので、音波通信はできません。
課題山積だった音波通信が、今、注目されているワケ
音波を利用した通信は、特に最近の技術というわけではなく、昔からある技術です。それがなぜ今、音波通信が注目されているのでしょうか。
最も大きい要因は、スマートフォンの普及にあると考えています。スマートフォンにはもれなくマイクとスピーカーが付いています。これはスマートフォンが「フォン」、つまり電話だからという当たり前のことです。それ故に、他の機器を追加することなく、ただアプリをインストールするだけで音波通信が可能になります。これは、街を歩いている人のほとんどが、音波通信の送受信機を持っているのと、ほぼイコールということです。
さらに音を聞くだけで受信完了という手軽さ。Wi FiやBluetoothなどは、上手く接続できなかったり、接続するまでに手間がかかったりと、意外と面倒な事が多いのですが、音波通信なら音を出すだけ、音を聞くだけの、とっても簡単な通信であることもその理由の一つです。
それでは全てのケースにおいて、音波通信万歳、音波通信ブラボーなのかというと、決してそうではありません。通信速度が遅い、遠くまで届かない、壁を通過できない、など色々な問題があり、どちらかというと問題山積みの通信方法です。
しかし、音波通信が壁を通過できないことは、逆に長所でもあります。例えば、電車の中で今乗っている車両を特定したり、教室内での出席確認に使ったり、お店の中にいる人だけにサービスを提供するなど、閉鎖された空間の中にいることを特定するのに使えます。これは、壁を通過してしまう無線通信では難しいことが、音波通信では簡単に実現できる一つの例です。
また、医療現場などの電波を使えない場所や、無線機器が多すぎて無線の混信で困っている工場など、電波以外で通信したいという要求に対しても音波通信であれば対応可能です。
つながる事が当たり前の今だからこそ、無線通信だけではカバーしきれないことも多くなっています。このような社会の要求に対して、音波通信は一つの選択肢として、注目度を増してきているのです。


