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これからどうなる?iPhoneでNFCはどこまで使えるのか

こんにちは、SSL研究員 難波です。
Appleのデベロッパー向けカンファレンスであるWWDC 18が 6月4日(日本時間6月5日午前2時)から5日間にわたり、米国のサンノゼで開催されました。すでに開催から1ヶ月以上が経ち、タイムリーな話題ではなくなっていますが、過去も含めたWWDCの発表から見えてくるAppleのNFCに対する考え方について検証したいと思います。

"WWDCで発表されること大予想"のような記事は毎年WWDCの開催前に多く目にします。かなり信憑性のあるものから噂話まで玉石混交なのですが、その中にNFCの話題が2011年頃から毎年登場しています。NFCはNear Field Communicationの略で、近距離無線通信の規格です。スマートフォンや非接触ICカードを「かざす」と通信するあれですね。
新しいiPhoneの発表のような派手なものに隠れがちですが、地味ながら毎年必ず話題に上り、そして毎回予想が外れます。ここ数年のWWDCは予想記事通りの発表が多く、サプライズが無い反面、外れることも少なくなっているので、そういう意味ではNFCは予想が外れる貴重な存在と言えます。それにも懲りず毎年の予想の一つに上がるのは、もう予想という枠を越えてAppleへの要望となっているのかもしれません。

そんな要望に応えるようにAppleもiPhoneのNFCへの対応をゆっくりですが進めてきました。2014年9月にApple Payを発表し、まずは米国から利用が始まりました。日本でも2016年10月にSuicaも含めて利用可能となりました。話題に登ってから実に5年かかっての実現です。
そんなに時間をかけての投入にもかかわらず、NFCの3つのモードのうち"Card Emulation"モードのみの対応で、しかもAppleが許可した限られたサービスでしか利用できない閉鎖的なものでした。
2017年のWWDC17でiOS11に「Core NFC」のフレームワークが追加され、今度こそデベロッパーにNFCが開放されるのかと期待されたのですが、「Core NFC」は、アプリケーションからNFCタグを読むことだけに限定されたものでした。
そして、今年のWWDC18の事前予想で、またもやNFCがデベロッパーに開放されるという噂(要望?願望?希望?)が飛び交いましたが、結局NFCに関する発表はほぼ無く、「Core NFC」への機能追加もありませんでした。
ここでほぼと書いたのは、米国の一部の大学で、iPhoneとApple Watchを学生証として使えるようにするという発表があったためです。確かに決済以外で"Card Emulation"モードを使用する事例であり、NFC利用の前進ではありますが、デベロッパーへの開放という事前予想は、こんな限定的な利用を期待したものではなかったはずです。

ここでiPhoneのNFCについて簡単にまとめてみます。
NFCには "Card Emulation"、"Reader/Writer"、"Peer-to-Peer"の3つのモードがあり、iPhoneでは"Card Emulation"モードは利用できますが、Appleが許可したサービスしか利用できません。"Reader/Writer"モードは、Appleが提供する「Core NFC」を使ってデベロッパーも利用可能ですが、NFCタグへの書き込みは出来ず、読み込みだけの用途に限られます。"Peer-to-Peer"モードに至っては全く利用できません。
つまりNFCの機能で、デベロッパーに開放されているのは、アプリケーションからNFCタグを読む機能だけであり、これではAndroid端末にあるようなNFCを利用した様々なサービスをデベロッパーが提供することは出来ません。
NFCの機能が完全に開放されると、"Card Emulation"モードでは、決済だけでなく、認証に関するもの、例えばiPhoneを鍵として使うことや、買い物のポイントカードとしての利用、"Reader/Writer"モードでは、ICカードの残高や利用履歴が見ることができるICカードビューアーなどのアプリケーション、"Peer-to-Peer"モードでは、ちょっとしたデータの交換などの用途が考えられます。
もちろんNFC対応のAndroid端末では、既に利用できる機能ばかりですが、NFCの機能を同じように利用できないiPhoneの存在が、NFCを使ったサービスの普及を妨げている要因の一つとなっていることは間違いありません。

ここ数年のNFCに対するWWDCの噂とAppleの対応の温度差を考えると、近い将来において、NFCの機能がデベロッパーに大きく開放されることは無いように思われます。
AppleのNFCへの対応は最初から非常に慎重です。まずは自社の決済サービスだけでの利用に限定し、それからAppleが許可したサードパーティーと一緒に、しかも一気に開放するのではなく、実証実験的なものから始めて、ゆっくりとその使用範囲を広げています。iPhoneのNFCは完全にAppleのコントロール下におかれています。今後少なくとも数年はそのポリシーは変わらないでしょう。

このような状況を考慮すると、SST(スマート・ソリューション・テクノロジー)が開発したSSTouchに代表される音を使った通信技術は、選択すべき近距離通信の一つとなるでしょう。それは全ての端末に存在するスピーカーとマイクを利用した通信技術であり、全てのデベロッパーが利用可能な通信技術であるからです。そしてiPhoneを含むスマートフォンが、"phone"つまり電話であり続ける限り、スピーカーとマイクは端末から消えることはないでしょう。全ての端末で利用できる近距離通信が望まれる中、一見レガシーな技術に思える音通信ですが、端末性能の向上とともに、より高度な信号処理を行えるようになった今、対応端末の多さだけでなく、速度と安定性をも兼ね備えた新しい通信技術として期待されています。

AppleのNFCに関するポリシーは、私の予想でしかないので、来年のWWDCが終わるころには、「すみません。間違いでした。」と謝っているかもしれません。しかし、WWDCの噂話として毎年期待されている近距離通信の一つとして、AppleやGoogleの思惑に左右されない音通信は、その選択肢からは無くならないと思っています。

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