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音通信をとりまく技術(1)

こんにちは、所長の安田です。
突然ですが、みなさんの生活環境に、ネット接続機器はどのくらいあるでしょうか?
私の自宅には光回線が入り、ルーターが1台、Wifiルーターが2台あり、ネットにはパソコンが3台、ホームセキュリティ1台、テレビとレコーダが1台づつ、AppleTV1台、ネットワークレコーダ2台、iPhone,iPadが5台繋がっています。
wifiルータが稀に接続できなくなると家族からクレームの嵐でwifiルータを再起動する事が未だにあります。そして、一人1台以上の電話回線を契約していて、外出先でもネットにずっと繋がっている時代になりました。

30年間で1万5千倍になった回線速度

1990年台、一般家庭に「ネット回線」と言えるものは何もなく、通信機器といえば電話しかありませんでした。インターネットが出始めの頃、家庭からネットに繋ぐためには電話回線にアナログモデムを繋げて通信する必要がありました。アナログモデムによる通信というのは「ピーッ、ガーッ・・・」と電話回線に音声の替わりに音にデータを載せる通信です。
音声と同じ周波数帯でV.32が9600bpsで変調方式が16QAM、V.32bisが14400bpsでTCM 128QAMという変調方式で音でデータを送る方式でした。
今のスマホの通信速度が4Gで下り150Mbps(理論値)ですから、9600bpsと比べると実に1万5千倍にスピードアップしている事になります。

音通信って何?まずは音の大きさ:振幅

さて、モデムではデータをどのように送っているのでしょうか?先程、変調方式という言葉が出てきましたが、データを変調して音にして音で通信します。
変調方式には色々な方式があります。まず振幅変調(ASK)。
振幅というのは、音の波の大きさです。大きな声を出すと音波は大きくなり、小さな声は振幅は小さくなります。例えば、データを送る時に1を送るときは大きな音、0を送る時は小さな音として送る事を振幅変調(ASK)といいます。例えば、音の大きさを1から10の10段階に区別できれば、数字を送る事ができます。
音の大きさをvol1〜vol10として、258という数字を伝えようとする場合には、vol2、vol5、vol8と順番に音を出せば、相手には2,5,8が伝わり通信できる事になります。

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周波数、ヘルツ、Hz

次に周波数、周波数というのは音の高さの事です。音の高さは何で決まるかというと、空気の振動の数です。
音は空気中を伝わる時に空気を振動させて伝わります。ギターの音を考えると、太い弦を弾くと低い音が、細い弦を弾くと高い音がでます。これは、太い弦はゆっくり振動して、細い弦は速く振動するからです。
この振動の数が周波数で、1秒間に振動する数がHz(ヘルツ)という単位になります。
ギターの一番太い6弦を弾いた時の周波数は82Hzなので、1秒間に82回振動している音という事になります。
これに対して一番細い1弦は330Hzで高い音の方が周波数が高くなります。
この周波数の違い(音の高低)によりデータを送る方法を周波数変調(FSK)と言います。

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そして位相

さて、最後に一番直感的に理解できない位相です...
ギターの弦は振動によって音を出しますが、弦の状態をスローモーションで見ると、下に押して弾いた場合には、下→真ん中→上→中→下→中という具合に周期的に振動します。この振動のどの部分に弦があるかを位相と言います。
振動が下から始まっているのか、上から始まっているのかなど位相の状態にデータを当てはめて通信を行うというのが位相変調(PSK)です。

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ケーブルモデムから空中の伝送へ

そして、前述したモデムのV.32の変調方式の16QAMというのは、振幅変調(ASK)と位相変調(PSK)を組み合わせたものです。モデムの変調方式は様々なものがあり、速度を上げながら進歩していった歴史があります。
モデムはケーブル(電話線)を通して通信を行う方法でしたが、ケーブルではなく空中を伝わる音による通信を使ったサービスも実用化されています。スマートフォンに必ずついていて、かつ当分なくなることのないであろうマイクやスピーカを使って通信できるため、様々な用途に使える技術として注目されつつあります。
この、空中を伝わる通常の音を使ったデータ通信、データの伝え方自体は今回見てきたモデムと同じで、目新しいものではありません。しかし、空中を伝わる音は周囲の雑音(ノイズ)や床や壁からの反射など、ケーブルによる電気的な通信よりも周囲の環境の影響を大きく受けるので、変調方式とあわせてエラー訂正やノイズ低減処理など様々な技術が必要になる点がモデム通信とは大きく異なる部分です。こうしたノイズ処理、エラー訂正処理をリアルタイムで行うための計算が、近年のCPUの進化=演算スピードの高速化によってはじめて可能になり、つまり処理が「間に合う」ようになり、さらに小型化が進むことでスマートフォンどうしでも音によるデータ通信ができるようになったわけです。 
デジタル技術というと、なにやらなんでも正確で速くできて、「人間味」とは真逆の世界のような印象ですが、技術の中身をのぞいてみると、実は「エラー」や「ノイズ」などといったものとの戦いに大変な労力がかけられていたりします。こうした泥臭いハードルを一歩一歩超えて、今日の様々な技術が成り立っている・・・エンジニアリングって、アナログでもデジタルでも、そこは一緒なんですよね。

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所長:安田 寛 Hiroshi Yasuda

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