SSLでは2018年6月の設立以降、キャッシュレスに関する独自調査を度々実施し、国内外におけるキャッシュレス化の動向に目を光らせてきました。
日本国内におけるキャッシュレス社会はどのように変わったのか。
また、『キャッシュレス・ポイント還元制度』が2020年6月末で終了した後、果たしてキャッシュレス社会は進むのか、衰退するのか。
客観的なデータとSSL独自の見解を交えてご紹介していきたいと思います!
脱キャッシュレス後進国へ
2020年6月22日、政府は2019年の民間消費に占めるキャッシュレス決済の比率は26.8%(前年比2.7ポイントアップ)だと発表しました。
2008年にはわずか11.9%だったキャッシュレス比率が2015年には18%と上昇し、2019年に26.8%と過去最高を更新しました。
キャッシュレス決済による消費額が約10年で倍以上に増え、QRコード決済に至っては前年の6倍と大幅に伸びたことがわかります。
"現金大国日本"において、わずかな時間でキャッシュレス決済による消費が増えた背景には2つの大きな出来事がありました。
ひとつは、2018年末にPayPayがおこなったいわゆる『100億円キャンペーン』を皮切りに、決済事業者各社が打ち出したキャッシュバックキャンペーンです。これを機に、スマホ決済ユーザーが一気に増えました。
ふたつ目は、今、まさに終わりを迎えようとしている『キャッシュレス・ポイント還元制度』です。
2019年10月から始まった、消費増税による消費の落ち込みを回避するための政府主導の施策です。
この制度に連動して、各決済事業者がユーザー囲い込みに向けさらなるキャンペーン施策を盛んに実施することで、キャッシュレス化を後押しする結果となりました。
経済産業省によると、登録加盟店数は還元事業開始当初の約50万店から2020年6月1日の時点で約115万店にまで増えています。
また、20年度補正予算で新たに755億円が計上されたことも、キャッシュレス決済による消費が急激に増えたことを意味しています。
もうひとつ「脱・現金」を後押しし、結果としてキャッシュレス決済を助長させた誰も予期していなかった要素があります。
新型コロナウイルス感染拡大もキャッシュレスを後押し
それは、未だに終息の目処がたたない新型コロナウイルスの世界的な感染拡大です。
緊急事態宣言中の在宅勤務や外出自粛で、ネットショッピングやデリバリーが増え、キャッシュレス決済が自然発生的に増えたことは疑いようがありません。
また、感染予防として現金を避ける人が増えたことも、結果的にキャッシュレス化促進を後押しする形になりました。新型コロナ専門家会議の提言を踏まえた政府の「新しい生活様式」にも、電子決済の利用が例示されています。
事業者側のキャッシュレス決済のインフラが整っていない場合も多いため、完全にキャッシュレス生活とはまだまだいかないものの、
・政府による政策
・民間企業によるキャンペーン
・新型コロナウイルスの世界的なパンデミックによって、
キャッシュレスによる消費と人口が今後も増加するとSSLは考えています。
日本もようやく"キャッシュレス後進国"から抜け出すか、、、
というところまで来たのかもしれません。
しかし、お隣の韓国のキャッシュレス比率は96%、中国は60%と大きな差が開いています。
現金への信頼度やATMの利便性の高さなど、文化の違いはあるにせよ日本がキャッシュレス大国の仲間入りを果たすためにはどうしたら良いでしょうか。
政府は2025年までにキャッシュレス決済比率40%にする目標を立てていますが、目標達成するもしないも『キャッシュレス・ポイント還元制度』終了後にかかっている!という見方が非常に強いです。
コロナ時代のキャッシュレス社会に必要な2つの条件
SSLは、ある条件を満たせばユーザーはキャッシュレス決済を選択し、事業者もキャッシュレスのインフラを満たさざる得なくなるという見解を持っています。
SSLが考える条件のひとつ目は、店舗でのキャッシュレス決済が「非接触型」であることです。つまり、ユーザーに「安心・安全」が提供されていることです。
新型コロナウイルス感染拡大以降、消費者は"コンタクトレス"、"ソーシャルディスタンス"というワードに非常に敏感です。
最近では、クレジットカードを機械に挿入し、暗証番号を入力し、カードを抜き取るという操作を顧客側に委ねる店舗も増えてきました。
セブンイレブンはいち早く、クレジットカードのNFC非接触決済に対応し、6月11日から全店舗でサービスを開始しました。
店舗の従業員にカードを渡さずに、レジの顧客側にあるリーダーに非接触IC 対応のカード(クレジット、デビット、プリペイド)をかざすだけで決済ができるというもの。もちろん、サインも暗証番号入力も不要です。
今はまだ非接触に対応している店舗は少ないですが、これが世界のスタンダードになる日も遠くないでしょう。
もう一つのキャッシュレス社会のための条件は、「ユーザー側の操作がシンプルであること」です。
経済産業省は『キャッシュレス・ポイント還元制度』登録加盟店は6月1日までに約115万店舗と発表しましたが、これらの多くは「ユーザースキャン型」と言われるユーザーが店舗の提示したQRコードを読み取るタイプの決済方法です。
このタイプは店舗側が専用のQRコードを準備するだけなので、専用機器も必要なく、初期投資にお金をかけずに導入することができるため、多くの中小企業や個店が加盟店登録をしたことでしょう。
しかし、このタイプには一つ問題があります。
それはユーザー(顧客)側の操作が非常に面倒くさいという点です。
1 スマホを取り出す
2 決済アプリを開く
3 店舗が提示したQRコードをスマホで読み取る
4 金額を入力する
5 店舗側が金額を確認する
6 決済ボタンを押す
いかがでしょうか。
少しでもたついたらランチタイムや終電間近の飲食店、夕方のスーパーではあっという間に行列ができてしまいます。
「密」を避けたいユーザーとしては、「違う手段で支払おう」となりかねません。
その点、非接触型のICカードやクレジットカードなどは「早くて簡単」であり、結果「密」を避けられるというメリットが揃っています。
このスマートフォンを活用したQR決済については、手数料の問題も議論に上がっていますが、手数料の問題だけでしたら、交通系ICカードの方が割高になるケースも多いと聞きます。
多くのユーザーを抱え、ユーザーが期待する「早くて、簡単で、安全」なツールであれば例え少し手数料が高くても、店舗側としては容易に撤退することはできません。
キャッシュレス大国へ仲間入りを果たすための条件を一言でいうと「ユーザーにとっていかに使い勝手が良いか」に限ります。
特にこのコロナ禍において、ユーザーの利便性や安全性を置き去りにして、一時的な「お得感」でユーザーを獲得しても、長期的な文化として根付くことは難しいでしょう。
もちろん"きっかけ"としては官民によるキャッスレス促進の施策は必要不可欠です。政府主導の「マイナポイント制度」、決済事業者による新たなキャンペーン施策など、今後の動きに目が離せません!
SSLは引き続き、キャッシュレス社会の動向に目を光らせ、情報発信に努めてまいります。